楽をするために、728行の仕様書を作った人を、私は初めて見た。
「楽をしたいので、全部AIに任せます」——
そう宣言した女子高生の話である。
アプリが動いたかどうかの話の前に、どうしても書いておきたい。
話は、AIから質問が18個返ってきた、あの日に戻る。
判断基準は「楽かどうか」
18問(+5問)に答えていく途中、判断に迷う場面が何度かあった。
たとえば、課題にかかる時間を誰が見積もるか。
私「これ、どうやりたいと思います?」
JK「もう、推定させちゃっていいかな」
「最初の目的が『楽に作りたい』だったので」
「全部AIに任せた方が楽かなって」
デザインの方針を聞いたときも、そうだった。
私「こういう風にしたいとか、参考画像とかあります?」
JK「シンプルにしたいです。色とかも、あんまり使わない感じで」
楽をしたい。シンプルがいい。手間を増やしたくない。
2年間「お金持ちになりたい」と言い続けて動かなかった人の判断基準として、 これ以上ないほど一貫している💦
楽をしたい人ほど、いい質問をする
ところが、である。
課題の写真をアップロードする仕様のところで、
「複雑になるから、1枚でいいんじゃない」と言ったのは私だ。
JK「課題写真って、1枚の方がいいんですか?」
私「……いや、複数枚パシャパシャ撮らなあかん場合もあるか。」
「複数枚でいいんじゃね?」
JK「それで、精度が変わるとかはないですよね?」
楽をしたいはずの人が、最後に精度の確認だけはしてくる。
彼女の基準は、ぶれていないのだ。
1枚に収めようと頑張るより、撮ったぶんをそのまま全部投げられる方が楽。
ただし、精度が落ちるならやり直しがでるので楽の意味がない。
楽の基準で、先生の判断が覆った。
時間をAIに推定させる話には、続きがある。
私「精度を上げる方法があって。」
「初めはAIに推定させて、1回目に実際にかかった時間を入力する。」
「3回ぐらい繰り返すと、差が縮まっていく」
JK「おお……確かに。」
「え、じゃあ、修正とかもできるようにした方がいいですかね?」
教えたそばから、自分で仕様を足してくる。
第4話のアラートと同じ動きである。
ここで、この日いちばん大事なことを話した。
プログラムは、同じことの繰返ししかできない。
だから、同じ計算をしてほしいとかに向いている
AIは、自己修正がかけられる。
ただし、毎回似た結果にはなるが微妙にブレる。
だから「全部AIに任せた方が楽」は、AIアプリにおいては怠惰ではなく、 わりと本質を突いた方針なのだ。
3色あれば足りる
「シンプルに、色を使わない」にも、ルールをひとつだけ足した。
色は3色以内。黒をメインに、いいことは青、悪いことは赤。
信号と同じで、説明しなくても意味が伝わる。
カラフルにするほど「どこを見ればいいか」が分からなくなる。
これはアプリに限らず、スライド資料でも同じ——大人の仕事でもそのまま使える。
JK「確かに」
かくして「楽をしたい」は、仕様書のあちこちに埋め込まれた。
写真は1回でまとめてアップロード。推定はAIに任せて、実績で補正。
だめなら手動でも直せる。色は3色。余計な機能はつけない。
エンジニアの世界には「怠惰はプログラマーの美徳」という古い言葉があるが、 ど素人は、それを知らずにやっている。
そして、728行になった
「楽をしたい」を詰めていった仕様書は、宿題で仕上げられて、 最終的に728行になった。
楽をするために、ここまで作り込む。
——冒頭の一文は、そういうことである。
その728行をAIに渡したら何が起きたか——
その話は、次回。
——ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
裏話をひとつ。実はこの回、当初の連載予定にありませんでした。
次回の実装回を先に書き終えたあと、授業の記録を読み直していて、
彼女の判断があまりに一貫して「楽かどうか」で決まっていることに
気づいてしまい、急遽1話増えました。
予想も構成も、本人に崩され続けている連載です。
次回は、いよいよ実装。728行をAIに渡したら、何が起きたか。
▶ 前話(第5話)「お金を気にせず生活できる人」って、いくら必要?
▶ 第1話から読む → マガジン「ど素人JK、お金持ちを目指す。」
この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。
(第6話・了)
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ながら起業のタクミ
会社員のまま、AIと組んで人生の主導権を取り戻す。その実践ログを書いています。
うまくいったことより、うまくいかなかったほうを詳しく書きます。
そっちのほうが、たぶん役に立つので。



